- 市場連動型の電気料金プランはやばい?
- 市場連動の最近の動向は?
- 市場連動型のメリット・デメリットが知りたい!
電気代を抑えたいという方が、まず第一に見直すべきなのは電気料金プランです。
現在、新電力会社の多くが「市場連動型」と呼ばれる料金プランを採用しており、大手電力会社よりも安い電気料金をうたっていますね。
プランを見直すときに、市場連動型プランの特徴をよく理解せずに契約すると、実際の電気代が今より高くなってしまう可能性があるので、注意が必要です。
本記事では、市場連動型プランの特徴やメリット・デメリットについて、過去10年の市場価格データを交えて解説します。
市場連動型プランを選んで良いか、早く知りたい方は こちら(本記事内ジャンプ)
これから電力会社の乗り換えを検討している方、この記事を読めば、各会社がどういうプランを出しているか、基本的なことが分かるようになります。
ぜひ最後までお読みください!
市場連動型プランとは?ざっくり説明
市場連動型プランとは、電気料金が「電気市場で取引される電気の値段に連動するプラン」です。
電気も、株や魚と同じように市場があって、そこで取引されているわけです。
電気の場合、例えば以下の影響を受けて価格が変動します。
- 需要と供給バランス
- 資源(原油、天然ガス等)の価格
- 気候条件
価格変動の電気料金への反映には、主に以下のパターンがあります。
- 電気料金が30分ごとに変動するパターン
- 電源調達費などに反映させるパターン
まずは電気料金の基本的なところから解説します。
電気料金の基本
電気料金は、毎月固定の基本料金と、電力使用量に応じて決まる電力量料金がベースです。
これに加えて、再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)が加算されます。
- 基本料金
-
契約容量によって決まる固定料金(最低料金)です。
- 電力量料金
-
電気使用量(kWh)✕ 電気の料金単価(円/kWh)で計算されます。
一般的なプランでは、さらに「燃料費調整額」による調整が入ります。
燃料費調整額とは?燃料費調整額は、電気を作るために必要な燃料(原油・天然ガス・石炭)の価格変動を反映するためのものです。
大手電力会社などで多く採用されているのは従量制のプランで、例えば以下のような計算方法になります。
- 再エネ賦課金
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電気使用量(kWh)✕ 再エネ賦課金単価(円/kWh)で計算されます。
再エネ賦課金は、太陽光発電などの再生可能エネルギーを普及させるための費用を、みんなで負担する制度になります。
2024年4月以降は、さらに「容量拠出金」や「発電側課金」が電気料金に反映されるようになりました。
電気料金が30分ごとに変動するパターン
30分ごとに変動するのは、「電力量料金」です。
このパターンでは、JEPXの取引価格と連動する「電源料金」と、託送料金やサービス料としての「固定従量料金」を組み合わせることが多いです。
またこのパターンでは、燃料費調整額による調整がないことが特徴です。
電気を各家庭へ送り届けるための費用(電気の通り道=電線の利用料というイメージ)です。
JEPX取引価格(システムプライス)の例として、2023年9月には以下のような変動がありました。
1日の中でも急激な変動が起こる事があるので、価格が高騰している時間帯は電気の使用を控える必要があります。
電源調達調整費などに反映させるパターン
大手電力会社の従量電灯プランと同じように、従量制で料金設定しているパターンもあります。
その場合、以下のような料金の計算方法になります。
ポイントは、電気の調達費用を電力量料金に反映するために「電源調達調整費」が加わることです。
「電源調達調整費」は、各社によって言い方が異なることがあります。
- 燃料費等調整額
- 市場価格調整額 など
これは、大手電力会社は自社で発電所を持つのに対し、このパターンの電力会社はJEPXで電気を調達することになるためです。
電源調達調整費はJEPXの市場価格と連動するものになりますが、各社とも算出方法が異なるので、契約する際は要チェックです。
多くの場合、3ヶ月分の市場平均価格が、2ヶ月後に反映されるので、タイムラグがあります。
従来のプランと市場連動型プランの違い
大手電力会社の従量電灯プランと新電力の市場連動型プランの違いは、JEPXから電気を調達しているかどうかがポイントです。
- 電力量料金が30分ごとに変動する
- 「電源調達調整」、「燃料費等調整」という言葉が計算で使われる
このような場合は、市場連動するプランになります。
大手などで使用される「燃料費調整」は、発電に必要な燃料の価格変動の影響を受けます。
それに対し、JEPXでの取引価格は、燃料費変動に加えて、市場取引価格(調達費用)の変動に影響を受けるものになるのです。
そのため変動幅は市場連動のほうが大きくなります。
市場連動型のメリット・デメリット
市場連動型プランのメリット、デメリットについて解説します。
メリット | デメリット |
---|---|
安く電気を使える 解約違約金がない | 急な高騰がある 毎月の予算が立てづらい |
安く電気を使える
市場連動型(30分ごと変動パターン)においては、JEPXの市場価格が安い時間帯であれば、電気代を抑えることができます。
2024年4月時点では、JEPX価格は安い時間帯も多く、電気代を抑えるメリットが活かせます。
一方、電源調達調整費などで対応しているパターンにおいては、基本料金、電力量料金単価が大手電力会社よりも安く設定されています。
ただ、電源調達調整費が大きくのしかかる場合も多いので、各社の約款をよく確認することをオススメします。
解約違約金がない
とくに30分ごとに変動するパターンを導入している電力会社は、解約違約金がないことが多いです。
価格が高騰すればすぐ解約する、ということも可能です。
電気代が急に高騰する
市場連動型プランの最大のデメリットとも言えるのが、市場価格の急騰リスクがあることです。
大手電力会社でも、「燃料費調整」で多少の高騰はあるのですが、JEPXの市場価格は桁違いの高騰になることがあります。
2021年1月15日、瞬間的に最大251円/kWhを記録したことがあります。
直近では大体10円/kWh前後なので、約20倍ですね・・・(汗)
毎月の予算が立てづらい
家計管理をしっかりされている方にとって、電気代が毎月変動すると予算が立てづらいです。
日々、高騰リスクが気になって不安になりやすい方には、不向きなプランになります。
年間で大枠の電気代を見積もっておくことで、予算管理していくことになるでしょう。
今後の高騰リスクは?
結論、株価や金利の推移と同様に、今後のJEPX市場価格は誰にも予測できません。
しかし、急な高騰リスクは覚悟しておくべきです。
ただ、市場価格の高騰が、私達の電気代にどれくらいのインパクトがあるのか、理解しておくことで心構えはできるでしょう。
- 過去10年間のJEPXシステムプライス推移
- 冷蔵庫の電気代ならどれくらいか
- 一般家庭の電気代への影響
について解説します。
※以下、30分ごとに変動するパターンを前提としています。
過去10年間のJEPXシステムプライス推移
2014年度〜2023年度のJEPXシステムプライスを調べました。
30分ごとの取引価格はJEPXのサイトで確認できます。
以下のようにまとめてグラフにしました。
- Max(青):各日の中の最大値
- Min(赤):各日の中の最小値
- Average(黄色):各日の平均値
- Reference(緑):29.8円/kWh
- 東京電力エナジーパートナー従量電灯Bの第1段階料金(2024年4月)
2014年度〜2023年度 システムプライス
グラフを見ると、毎年高騰していますね。
特に夏場、冬場が高騰しやすい時期のようです。
やはり冷暖房で電気の需要が高まりますからね。
過去10年間のトータルの平均値は、約11円/kWhになります。
各年度のそれぞれの平均を取ると以下のようになります。
年度 | 最大値の平均 | 最小値の平均 | 年間平均 |
---|---|---|---|
2014 | 17.97 | 12.12 | 14.67 |
2015 | 12.99 | 7.66 | 9.78 |
2016 | 13.50 | 5.95 | 8.46 |
2017 | 14.76 | 6.74 | 9.72 |
2018 | 13.63 | 7.02 | 9.76 |
2019 | 11.94 | 5.39 | 7.93 |
2020 | 20.39 | 4.99 | 11.21 |
2021 | 23.60 | 7.20 | 13.46 |
2022 | 33.12 | 9.02 | 20.41 |
2023 | 16.30 | 4.87 | 10.73 |
冷蔵庫の電気代ならどれくらいか
どの家庭にもあり、毎日、1日中電気を使用しているものといえば、冷蔵庫です。
市場価格高騰時も電気を使わざるを得ないですね。
過去10年間のJEPX市場価格から、冷蔵庫の電気代を試算してみました。
家電製品協会によると、冷蔵庫(401〜450L)の年間電気使用量は、273kWh/年です。
最も高い2022年度と最も安い2019年度との差は、約3,400円/年(約283円/月)となります。
最大の変動幅としては、このくらいということになります。
一般家庭の電気代への影響
環境省によると、1世帯が1年間に消費した電気は、全国平均で4,175kWhです。
年間でまんべんなく電気を使用したとして、電気代の変動幅は以下のようになります。
この場合の変動幅は、最大で約52,000円/年(約4,300円/月)となります。
月4,300円も高くなるのは、結構大きな金額です。
市場連動の高騰時と、その時の電気使用状況によっては、もっと変動する可能性もあります。
どんな電力会社がある?
市場連動型プランを採用している電力会社をざっくり紹介します。
- 30分ごとに変動するプランの会社
- 電源調達費などに反映するプランの会社
30分ごとに変動するプランの会社
電力会社 | プラン名 | 供給エリア | 基本料金 | 電源料金 | 固定従量料金 | 燃料費等調整額 | 解約違約金 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
【公式】Looopでんき
| スマートタイムONE | 全国 ※沖縄は本島のみ | なし | 30分ごと変動 | 託送料+サービス料 | なし | なし |
TERASELでんき | TERASELマーケットプラン | 全国 ※沖縄・離島以外 | あり | 30分ごと変動 | 託送料+サービス料 | なし | なし |
アストでんき | フリープラン | 全国 ※沖縄・離島以外 | なし | 30分ごと変動 | 託送料+事業運営費 | なし | なし |
サニックスでんき | スポットバリュープラン | 全国 ※沖縄・離島以外 | あり | 30分ごと変動 | 託送料 +需要調整管理手数料単価 | なし | なし |
テラエナジーでんき | 市場連動プラン | 東北・東京・関西・中部・ 中国・四国・九州電力管内 | なし | 30分ごと変動 | 託送料+事業運営費 | なし | なし |
リミックスでんき | Styleプラス Styleプラスeco | 全国 ※沖縄・離島以外 | なし | 30分ごと変動 | 託送料+サービス料 | なし | なし |
電源調達費などに反映するプランの会社
このパターンの新電力会社は非常に多いですが、プランの内容が各社それぞれです。
詳しくは各社の約款を確認することをオススメします。
電力会社 | プラン名 | 供給エリア | 基本料金 | 電力量料金 | 燃料費調整 | 電源調達調整 | 解約違約金 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
アイ・グリッド・ソリューションズ | スマ電 | 東北・東京・関西・中部・ 北陸・中国・四国・九州電力管内 | なし | 昼間時間と その他時間で単価設定 | あり | あり (市場価格反映) | なし |
アースインフィニティ | バリューパック+ | 全国 ※沖縄・離島以外 | あり | 3段階料金 | あり | あり (市場価格反映) | あり |
みんな電力 | プレミアム100プラン | 東北・東京・中部・関西・中国・ 四国・九州電力管内(離島を除く) | あり | 固定単価 | なし | あり (市場価格反映) | なし |
しろくま電力(ぱわー) | しろくまプラン | 全国 ※沖縄・離島以外 | あり | 3段階料金 | なし | あり (市場価格反映) | なし |
HTBエナジー
| たのしいでんき など | 全国 ※沖縄・離島以外 | あり | 3段階料金 | なし | あり (市場価格反映) | あり |
ソフトバンクでんき | おうちでんき | 北海道・東北・東京・中部・関西・ 中国・四国・沖縄電力館内 | あり | 3段階料金 | あり | あり (市場価格反映) ※エリアによる | あり ※エリアによる |
エバーグリーンリテイリング | 従量電灯 | 全国 ※沖縄・離島以外 | あり | 3段階料金 | なし | あり (市場価格反映) | なし |
エフエネ | バリュープラン | 全国 ※沖縄・離島以外 | あり | 3段階料金 | あり | あり (市場価格反映) | あり |
キューエネスでんき | Q100プラン | 全国 ※沖縄・離島以外 | あり | 固定単価 | なし | あり (市場価格反映 ※ただし比率は1割) | なし |
ストエネ | Pプラン Fプラン | 全国 ※沖縄・離島以外 | P:あり F:なし | 固定単価 | なし | あり (市場価格反映) | なし |
グリムスパワー | バリュープラン シンプルプラン | 全国 ※沖縄・離島以外 | あり | 3段階料金 | あり | あり (市場価格反映) | あり |
Japan電力 | くらしプランS しごとプランS | 全国 ※沖縄・離島以外 | なし | 固定単価 ※401kWh以上は割安 | あり | あり (市場価格反映) | あり |
イデックスでんき(新出光) | ベーシックプラン | 九州エリア ※離島を除く | あり | 3段階料金 | あり | あり (市場価格反映) | なし |
シン・エナジー | きほんプラン | 全国 ※離島以外 | あり | 3段階料金 | 沖縄のみあり | あり (市場価格反映) ※沖縄以外 | なし |
スマート(地域電力) | 家庭用基本プラン | 全国 ※沖縄・離島以外 | あり | 3段階料金 | あり | あり (市場価格反映) | あり |
タダ電 | タダ電プラン | 全国 ※沖縄・離島以外 | あり ※有料時 | 固定単価 | あり ※有料時 | あり (市場価格反映) ※有料時 | なし |
東急パワーサプライ | 従量電灯 | 東京都・神奈川県・千葉県・ 埼玉県・茨城県・栃木県・ 群馬県・山梨県・静岡県の一部 (富士川以東)(*)離島を除く | あり | 3段階料金 | あり | あり (市場価格反映) | なし |
ドコモでんき | Basic | 全国 ※沖縄・離島以外 | あり | 3段階料金 | あり | あり (市場価格反映) | なし |
パルシステムでんき | 発電産地応援プラン | 東京・中部・東北電力管内 | あり | 3段階料金 | なし | あり (市場価格反映) | なし |
ハチドリ電力 | ハチドリプラン | 全国 ※沖縄・離島以外 | あり | 固定単価 | なし | あり (市場価格反映) | なし |
めぐるでんき | スタンダードプラン | 東京電力管内 | あり | 固定単価 | なし | あり (市場価格反映) | なし |
楽天でんき | プランS | 全国 | なし | 固定単価 | なし | あり (市場価格反映) | なし |
どうすれば電気代安くなる?
市場連動型プランでは、電気代が高騰するリスクがありますが、以下のような対策で電気代を抑えることができます。
- ピークシフトを意識する(30分ごと変動パターン)
- 家電を新しく買い替える
- 太陽光パネルと蓄電池を活用する
ピークシフトを意識する
ピークシフトとは、電気を使う時間を料金単価の安い時間帯にずらす方法です。
Looopでんきなどでも紹介されています。
安い時間帯は、JEPXのサイトで前日に確認できます。
洗濯乾燥機を使う時間帯や、買い物に出かける時間を意識することで、電気代を抑えることができます。
家電を新しく買い替える
家電の省エネ性能は年々向上しています。
古い家電を使っている方は、どうせ買い替えるのであれば、省エネ性能の高いものに買い替えたほうが良いでしょう。
例えば冷蔵庫の場合、10年前の冷蔵庫から買い替えるだけで、年間5,000〜10,000円の節約も可能です。
以下の記事も参考にしてみてください。
太陽光パネルと蓄電池を活用する
太陽光パネルや蓄電池を導入されている方は、市場連動型プランでもリスク回避できる可能性が高まります。
料金単価の安い時間帯に蓄電し、高い時間帯で蓄電した電気を使う、といったテクニックが使えるからです。
太陽光パネルで発電した電気を効率良く使うことで、電力会社から買う電気の量を減らし、市場変動の影響を極力減らすことが可能です。
市場連動型プランを選んでもよいか
市場連動型プランの特徴は、ものすごくざっくり言うと、
- 安いときは大手より安い
- ものすごく高くなる時がある
ということです。
結局どうしたらいいの?
心配性な方は大手電力のプランが無難です。
以下のような方は、市場連動型プラン選択の余地があるかもしれません。
- 節電意識が高く、毎日の料金状況を確認できる
- 毎日ゲーム感覚で、電気使用をコントロールできる
- 一時期の高騰が受け入れられる
コロナ禍以降は異常な高騰も見られましたが、トータルで見れば安くなる傾向、という考え方もできるかもしれません。
上記のような考え方を、家族や夫婦で一致させるのは難しいものです。そういう意味では一人暮らし(単身世帯)の方が向いているのではと考えています。
電力会社比較サイト「エネチェンジ」で自分にあうかどうか確認してみましょう。
\ 限定特典もあり! /
まとめ
市場連動型プランには以下の2パターンがあります。
- 電気料金が30分ごとに変動するパターン
- 電源調達費などに反映させるパターン
いずれもJEPXで取引される電気の価格が関わっています。
JEPXでの取引価格について、今後どうなるかは予測することはできませんが、2024年4月現在では落ち着いています。
ただし、「必ず高騰する時期がある」ということを忘れてはいけません。
それを踏まえ、以下のような方には市場連動型プランは不向きであると言えます。
- 高騰時に家計が圧迫し耐えられない
- 毎日の変動を気にするのが嫌だ
このような方は、大手電力のプランが無難でしょう。
一方で、長期スパンで考えてトータル安くなればよい、と考えられる方は市場連動型プランを検討しても良いかもしれません。
各電力会社の電気料金の内訳を、しっかり確認し、電気代節約の第一歩を踏み出しましょう。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!